【お客様訪問】S-3180Vの可能性に早くから着目。i-Constructionをはじめ、多様な活用術に迫る。- 金杉建設様 –
埼玉県春日部市を拠点に、公共工事から民間工事まで、幅広いプロジェクトを手掛ける金杉建設株式会社様。
ICT(InformationandCommunicationTechnology:情報通信技術)を全面的に活用したi-Constructionにも、早い段階から積極的に取り組まれています。i-Constructionへの対応について、弊社代表取締役の田中秀彦が、吉川祐介専務取締役にお話を伺いました。(以下、敬称略)
田中:御社の概要を簡単にお聞かせください。
吉川:1950年(昭和25年)の創業以来、今年で68年目を迎えます。現在の従業員数は、関連会社を含めて約80名になります。
田中:御社は2017年に建設土木関係の賞を16も受賞をされています。それだけ社員の方の意識が高いということでしょうか。
吉川:そうですね。「ひとつひとつの工事で賞を取る気で取り組もう」と声を掛けて実践しています。
田中:御社ではi-Constructionにも積極的に取り組まれ、2018年度の「i-Construction大賞」を受賞されています。i-Constructionに取り組まれたきっかけについて、教えていただけますか。
吉川:国土交通省がi-Constructionに取り組む10年ほど前の話になります。情報化施工の普及に向けた試験施工を実施することになり、弊社は対象工事となった築堤工事を受注しました。この受注をきっかけとして、弊社は重機のシステムなどの自社購入に踏み切り、盛土の敷均し・締固めの情報化施工管理とTS出来形管理を行いました。
その後、国土交通省では2016年度からICT施工への取り組みである「i-Construction」がスタートし、弊社でもICT活用工事を受注しました。最初はICT施工を外注に出していましたが、外注施工ではコストの面や社内における技術向上の面でデメリットが多く、それを解消するには自社でICT機器を所有するしかないと考えるに至ったのです。
現在は10年前に購入した情報化施工の機器をICT施工に活用しているほか、3D地上型レーザスキャナ、ICT建機、3次元設計データ作成ソフト、点群処理ソフト、3次元出来形管理ソフトなどを所有しています。ICT施工の内製化は、弊社の特性の一つと言ってもいいでしょう。
田中:i-Constructionへの対応を躊躇する企業さんが多い中、御社は先駆者とも言える存在ですね。その点については、どのようにお考えですか。
吉川:弊社には、重機や測量機、専門技術ソフトをリースや外注で済ませるのではなく、自社保有することで、社内の技術レベルを向上させていこうと考える企業風土がありました。「前例や実績のない新製品だから購入しない」と考える企業さんもいますが、私たちは「まだ市場がない物を取り入れ、そこに技術的な価値を見出そう」という考えを常に持っています。そのような企業風土に基づいて、メーカーさんが作った最先端の機械を積極的に取り入れてきました。
田中:新しい製品や技術を導入することについて、実際にそれらを使用する立場の方の反応はいかがですか。
吉川:これからの土木技術には、生産性の向上とデータ解析の操作技術が必須となります。
スマートフォンを例に考えてみてください。最初のうちは「スマホはよく分からない」と触れることさえ避けていた人でも、お孫さんが生まれると使いこなしていたりしますよね。それと同じで、「これを覚えなければ、ご飯が食べられなくなる」という思いで懸命に新しいことと向かい合い、技術を習得するようにしています。
田中:PENTAXの3D地上型レーザスキャナ「S-3180V」を導入されたきっかけを教えてください。
吉川:現場の点群化をより効率的に行いたいと考えたことがきっかけです。
従来のように点群化にUAV(無人航空機、通称ドローン)を使用する場合、写真を撮影してから整理を行ったうえで、それらの写真データを点群データに変換する必要があるため、非常に時間が掛かっていました。さらに、河川の工事は強風の日が多くなる冬場に繁忙期を迎えるため、UAVの飛行が困難な日も出てきます。そうなると測定を諦めるしかありませんが、現場は常に工期に追われているので困ってしまうわけです。
このようにUAVを使用すると、現場の工程管理がUAVの撮影コンディションに影響されてしまいます。そこで弊社としては、現地の点群データが安定して取得できるうえに、写真データを点群に変換する必要があるUAVよりも、始めから点群を測定できるレーザスキャナの方が効率的であると判断し、御社の3D地上型レーザスキャナ「S-3180V」が最適ではないかと考えたのです。三脚に載せて使用する点も今までのトータルステーションに近く、土木技術者であれば簡単に扱えるだろうと思い、導入の決め手になりました。
田中:実際にS-3180Vを導入された前と後では、どのような違いを感じていますか。
吉川:顕著な違いは、観測者が決めたポイントはもちろんのこと、観測者が予測できないポイントもしっかり押さえてくれるところです。工程も組みやすくなりました。こちらについては、後ほど現場担当の小俣から、より具体的なお話ができると思います。
田中:S-3180Vは、防災においても活用の可能性がありますか。
吉川:例えば、ブロック塀の位置を3Dスキャナで取得しておき、地震などで傾いたときに再度データを取得することで、どの部分が変わったのか、データの比較に利用できると思います。他にも、たくさんの計測器と時間を要する山の計測については、3Dスキャナを用いた方が容易になるでしょう。3Dスキャナで取得したデータを前後で比較することにより、山の動きを把握して災害を予測するような可能性が秘められているかもしれません。
田中:本日は大変貴重なお話をありがとうございました。次回は実際に現場で作業されている社員の方にインタビューさせて頂きます。
写真1:吉川祐介専務取締役(左)とTIアサヒ株式会社 田中秀彦代表取締役(右)と金杉建設株式会社様にて
【お客様訪問】S-3180Vによる効率化の実態とは – 金杉建設様 –
埼玉県春日部市を拠点に、公共工事から民間工事まで、幅広いプロジェクトを手掛ける金杉建設株式会社様。
ICT(InformationandCommunicationTechnology:情報通信技術)を全面的に活用したi-Constructionにも、早い段階から積極的に取り組まれています。ご導入いただいた3D地上型レーザスキャナ「S-3180V」について、弊社代表取締役の田中秀彦が、小俣陽平i-Construction推進室長にお話を伺いました。(以下、敬称略)
田中:ここからは、実際の現場でご活躍されているi-Construction推進室の小俣陽平室長にお話を伺いたいと思います。S-3180Vを使用した印象はいかがでしたか。
小俣:UAVと比べると、計測作業そのものは地味な印象でしたが、計測後のパソコン処理がUAVよりもかなり短時間で完了したことには驚きましたね。鮮明なカラー化点群で現場が再現されることにも衝撃を受けました。従来は外注でUAV測量を行っていたため、点群データが納品されるまでに数日を要していました。S-3180Vを自社で購入した結果、計測したその日のうちに社内で点群データを確認することが可能になり、大変助かっています。
田中:どのような作業でS-3180Vの便利さを実感されますか。
小俣:動態観測で使用するときですね。着手前の地形データを測定しておき、施工後に測定したデータを重ねることで、地盤の変状や変位などが分析できます。従来はトータルステーションやレベルを使用して、変位測定点の挙動の観測を行っていましたが、S-3180Vを導入したことで、点群つまり「面」での挙動観測が可能になったのです。隆起や沈下の状態が視覚的に把握できるようになりました。発注者への説明の際にも、簡潔で明瞭な資料として利用できています。
橋脚などの測定についても、従来は道路規制をしたうえで高所作業車を配置してから測定を行うという手間が掛かっていました。計測後のデータを見てから、一部の測り忘れに気づくこともありました。S-3180Vを使用すると、道路規制の必要はなく、即時に計測ができて測り忘れもないので、大変便利です。
田中:作業の効率化という点については、いかがですか。
小俣:S-3180Vを使用することで、築堤工事のような距離の長い現場作業が効率よく進められるようになりました。
築堤工事では、法面整形が完了した区間から点群出来形測定を実施し、発注者の立会確認を受けた後で次工程の張芝やブロック張りに移ります。従来の外注による点群測量では、出来形測量や発注者の立会確認、次工程業者の着手など、工事に関わるさまざまな日程の決定について、外注業者が主体にならざるを得ませんでした。
S-3180Vを導入してからは、法面整形完了後、すぐに出来形測定を行い、その日のうちに点群処理を完了させて、翌日には発注者の立会確認が実施できるようになりました。S-3180Vを自社で所有することで大幅な効率化が実現し、大きなメリットを感じていますね。
田中:S-3180Vを用いた作業は何名で行っていますか。
小俣:現場にもよりますが、外業は2名で行うことが多いです。歩く距離は長くなりますが、1名で行うこともあります。社内に戻ってからのパソコンでのデータ処理は、1名で行っています。
田中:週にどのくらいの頻度でS-3180Vをお使いですか。
小俣:週1回は使用しています。
田中:S-3180Vの新たな活用方法を何かお考えですか。
小俣:ICT施工の範囲を超えた場面でも、いろいろと試行錯誤を繰り返しながら活用を試みています。配管が複雑な場所で現地測定に利用できるのではないかと考えているところです。
田中:最近、新たに導入された機器があるそうですね。
小俣:実は3Dプリンタを導入しました。将来的にはS-3180Vで取得したデータをもとに、実際の現場の3D模型を作成して、現場の状況をよりリアルに把握できるようにしたいと考えています。
田中:本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
金杉建設株式会社様の新しいことへの積極的なチャレンジと志の高い思いに感銘を受けた対談となりました。御社の今後のますますのご発展をお祈り申し上げます。本日は大変貴重なお話をありがとうございました。
■金杉建設株式会社様 ホームページ
http://www.kanasugi.co.jp/
写真:インタビューにお答え頂いたお二人と金杉建設株式会社様本社前にて(現在新社屋建設中です。)
(中央)吉川祐介専務取締役
(左)小俣陽平i-Construction推進室長